高松高等裁判所 平成7年(行コ)5号 判決 1996年8月29日
愛媛県伊予三島市中曽根町一六三八番一
控訴人
井上忠彦
右訴訟代理人弁護士
岡儀博
愛媛県伊予三島市中央五丁目九番四五号
被控訴人
伊予三島税務署長 田中修身
右指定代理人
秋山実
同
泉本良二
同
大竹聖一
同
海老原明
同
早川幸延
同
平賀孝男
同
三谷博之
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が控訴人に対し、平成二年六月三〇日付でした控訴人の昭和六三年分の所得税についての更正のうち、総所得額三一二〇万七一〇六円を超える部分、及び、同日付でした控訴人の過少申告加算税賦課決定のうち、これに対応する部分をいずれも取り消す。
第二事案の概要
次に訂正、付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第二の記載と同じであるから、これを引用する。
一 八頁末行の冒頭に「本件インパクトローンと本件先物為替予約とは、経済的、法律的見地からも、当事者の意思表示の解釈の見地からも、不可分一体のものとして捕えるべきであるから、本件先物為替予約のみを分離し、本件為替差益を独立の収入とみるのは不当であるところ、」を加える。
二 九頁末行の「法人税法基本通達」を「法人税基本通達」に改める(以下、争点に対する判断部分を含め、「法人税法基本通達」とあるのをすべて「法人税基本通達」に改める。)。
三 一一頁六行目の後に改行して次のように加える。
「3 過少申告加算税の賦課決定に対する信義則違反の主張について
被控訴人は、控訴人が昭和六三年分の確定申告をするに際して控訴人が行った借入金の金利の経費控除につき、控除の額を減らすようにとの被控訴人の説得に控訴人が応じなかったため、その報復手段として、平成元年四月一七日の控訴人に対する第一回の税務調査の際には肯認していた、本件支払利子の経費性についての見解をあえて変更して、本件インパクトローンにつき過少申告加算税を賦課してきたものであり、このような被控訴人の態度は明らかに課税権の逸脱に該当し、違法である。」
四 一三頁初行の後に改行して次のように加える。
「3 信義則違反を理由に課税処分を違法として取り消すことができるのは、課税庁が納税者に対して信頼の対象となる公的見解を表示したことや、納税者がその表示を信頼してその信頼に基づいて行動したところ、後に右表示に反する課税処分が行われて納税者が経済的に不利益を受けたことなどが必要であると解すべきところ、控訴人の主張は、これらの要件を満たさないから、主張自体失当である。」
五 一三頁六行目の後に改行して次のように加える。
「3 過少申告加算税の賦課決定が信義則に反するか。」
第三当裁判所の判断
控訴人の請求は、理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は、次に訂正、付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第三、第四の記載と同じであるから、これらを引用する。
一 一六頁五行目の「四三頁」の次に「参照」を加え、一七頁五行目の「三六-一四」を「36-14」に、一九頁二行目の「本件先為替差益」を「本件先物為替差益」に改める。
二 四五頁七行目の「参入する」を「算入する」に改める。
三 四九頁六行目から五一頁初行までを次のように改める。
「三 争点3(信義則違反)について
控訴人は被控訴人(担当者は鎌田国税調査官)が、本件更正等の処分に先立つ平成元年四月一七日、控訴人に対する第一回目の税務調査を行った際、本件支払利子の経費性を認める趣旨の書面(甲四)を作成したなどと旨主張するが、証拠(甲四、乙一三~一五、一六の1~4、一九)によれば、控訴人に対する昭和六三年分の所得税に関する税務調査は、鎌田国税調査官を担当者として平成二年四月に開始され、甲四の書面は、同調査官が、平成二年五月二三日、右調査の過程で控訴人側の税理士に説明する際に控訴人側の主張内容をメモ書きしたもの(乙一五)に控訴人に書き加えた書面であると認められ、右認定を左右するに足りる証拠はないから、控訴人の主張はその前提を欠くし、他に、被控訴人が報復を目的として本件インパクトローンにつき過少申告加算税を賦課したことをうかがわせるべき証拠もない。よって、控訴人の前記主張も理由がない。」
第四 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。
(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 裁判官 奥田正昭)